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普通なら立てるはずもない、箪笥から物は落ちるはずだし、そもそも箪笥も倒れる。
なのに、震度が大きくなった瞬間から、部屋の中の時間が停まっているかのように、全てが静止している。
「室内定点観測温度各所上昇を確認」
サーモグラフィーに視線をやると、家具という家具がほのかにオレンジ色に変化していた。
眉を寄せた鷹也に、九尾が小さく答えた。
「人の起こしたポルターガイストはその対象物が微かに暖かくなる」
「え?」
「超心理学の実験よ。ポルターガイストは心霊現象の場合と、人為的──いたずらも含めてね──の場合がある」
「はい……」
「その中でも、念力や念動力と呼ばれる能力者が無意識、もしくは意識的に起こす場合、その対象物は温度を持つのよ」
感心して頷き、鷹也はまじまじとサーモグラフィーのモニターを覗き込む。
「どう? 鷹也の見てる世界と一致してる~?」
「……もっと白い光が強く見えますけど、大体は」
モニターの中より、実際に見た部屋は白い光に包まれている。
鷹也がそれに気づいたと察した九尾は、にっこりと微笑んでマイクのスイッチを入れる。
「真白、力を止めて」
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