03 真白

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 普通なら立てるはずもない、箪笥から物は落ちるはずだし、そもそも箪笥も倒れる。    なのに、震度が大きくなった瞬間から、部屋の中の時間が停まっているかのように、全てが静止している。 「室内定点観測温度各所上昇を確認」  サーモグラフィーに視線をやると、家具という家具がほのかにオレンジ色に変化していた。  眉を寄せた鷹也に、九尾が小さく答えた。 「人の起こしたポルターガイストはその対象物が微かに暖かくなる」 「え?」 「超心理学の実験よ。ポルターガイストは心霊現象の場合と、人為的──いたずらも含めてね──の場合がある」 「はい……」 「その中でも、念力や念動力と呼ばれる能力者が無意識、もしくは意識的に起こす場合、その対象物は温度を持つのよ」  感心して頷き、鷹也はまじまじとサーモグラフィーのモニターを覗き込む。 「どう? 鷹也の見てる世界と一致してる~?」 「……もっと白い光が強く見えますけど、大体は」  モニターの中より、実際に見た部屋は白い光に包まれている。  鷹也がそれに気づいたと察した九尾は、にっこりと微笑んでマイクのスイッチを入れる。 「真白、力を止めて」
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