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案内された部屋のセキュリティには『坂美野市地域管理官室』と小さく書かれていた。
「あれ……案内……」
真白がぽつりとつぶやく。
「あー、これ? 鷹也が迷子になるかもって佐々ちゃんに作ってもらったのよ」
「ありがとうございます、正直助かります」
「毎回お迎えに行くのは佐々ちゃんだし、そんな手間はね~?」
「別にそこまで手間じゃないですけど、鷹也くん、気を遣っちゃうでしょ? だから、名前テープで貼らせてもらったの」
「感謝しなさいよ~ぉ」
笑いながら九尾はセキュリティーを解除し、一番はじめに執務室に足を踏み入れた。
「はい、ここが執務室よ~。しばらくは道を覚えられないだろうから、佐々ちゃんに連絡してね~」
「あたしは覚えてます」
「あたしは、ってなんだよ……」
鷹也のぼやきに、真白はちらりと視線を寄越した。
「あたしはね、ここで育ったの。チルドレンよ」
「はっ? チルドレン?」
「真白」
九尾がどこか咎める口調で制し、佐々は困った顔をして肩を竦めた。
「もう、段取りがあるんだから、無視しないでよね~」
ふん、と真白は息巻いた。
九尾はそんなふたりをおかしそうに目を細めて笑っている。
「ふたりが仲良く出来そうで嬉しいわ~。私のイチオシの組み合わせなの~」
「九尾さんが決めたんですか?」
「そうよ、鷹也。あなたのデビューと真白のデビューが重なって本当に良かったと思ってるのよ~」
そう言われて、鷹也と真白は横目で、お互いを伺った。
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