4人が本棚に入れています
本棚に追加
/134ページ
04 白昼の出来事
「待て!」
鷹也が叫ぶと、数メートル先を逃げていた少年が振り向きざまに石を投げつけてきた。
「……危なっ!」
石は鋭い軌道を描いて、鷹也に飛び掛かってくる。
その石は灰色の光をまとっていた。
「人に当たったらどうするんだ!」
当てるつもりで投げられていると分かりつつも、そう叫ばずにはいられなかった。
上半身をずらすと、飛んできた石はカクンと微かに軌道を変える。
「おい、待て!」
人気のないガード下を追いかけて数分、少年のペースは徐々に落ちてきている。
鷹也との差も縮まってきた。
(クソっ、あと少し……絶対に逃がすか!)
「なんなんだよ! お前!」
少年はそう喚きながら、路上駐輪されていた自転車を思いっきりひっくり返す。
能力の影響を受けた自転車がトランプのように広がって倒れてくる。
避けるために視線を逸らした瞬間、
「きゃっ」
「っ、なんだよ、危ねえなババア!」
と悲鳴と叫び声が交差した。
ハッと顔を上げると、路地から出てきた中年の女性を少年が突き飛ばしていた。
慌てて腕を伸ばして女性を受け止める。
地面に倒れ込んだものの、女性は怪我はないようだった。
突然の出来事に目を丸めて、鷹也の腕の中で縮こまっている。
「大丈夫ですか?」
「え、ええ……ありがとう」
女性は小刻みに頷いた。
「──そこまでよ」
最初のコメントを投稿しよう!