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真白の声がする。
鷹也の後を大人しく走っていた真白は、右手を前に伸ばし少年に真っ直ぐに向けた。
声に呼応するように、微かに空気が揺れた。
「他人に迷惑をかけるのはやめてよね」
低く潜められた声。
すっと真白は、少年を止めるように手をかざした。
「真白、お前!」
咄嗟に鷹也は女性を抱きかかえるようにして身を伏せた。
真白が両手を重ねた瞬間、少年に向かって一直線に風が駆け抜けた。
轟音を伴ったその風に、地面に伏せている鷹也もじり、と動かされる。
「──ッ」
少年は悲鳴も上げることが出来ずに、その場に倒れる。
風が止む。
真白は手を下ろして、その場伸びている少年のところにゆっくりと歩み寄った。
「真白。止せ」
「気絶してるみたいだけど」
鷹也の制止を無視して、真白はつま先で少年を蹴る。
その時、少年は目をパッと見開いて真白の足を取った。
「このっ……!」
どちらの声だったかは分からない。
真白の振り上げた手は光をまとい、足に絡んだ少年の腕もぼんやりとした光が灯る。
光は圧倒的に、真白の方が強い。
「真白、やめろ! そいつ、死ぬぞ!」
──あのまま振り下ろしたら、『モグリ』が死ぬ!
鷹也の叫びに、びくりと真白が手を止めた。
「ああ、もうっ!」
まどろっこしそうに真白が焦れた声を上げた。
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