04 白昼の出来事

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 捕まれた足を、真白が大きく引き下げる。  少年はぎょっとして真白を見上げた。  少年の灰色の光を、真白の純白の光が染め抜いていく。 「うざったいわね!」  勝負の決まった瞬間だった。  真白が振り抜いた足は、少年を近くの壁に叩きつけた。 「……あいつ、死んでないよな……」  鷹也が身を起こすと、腕の中にいた女性に手を貸した。  女性はきょとんとしたまま周囲を窺っている。 「お兄ちゃんたち、何? これ、映画か何か?」 「あ、すみません、巻き込んでしまって」 「ケガはないですか?」 「こんな男前に庇ってもらえて、怪我どころか回復しちゃったわよ。あの子がぶつかって来た時は心臓が停まるかと思ったけど」 「元気そうでよかったです」 「うふふ。私買い物途中だったんだわ、行くわね」  深い疑問も持たずに立ち去ってくれて助かった。  鷹也は胸を撫で下ろしながら、真白に蹴飛ばされた少年の元に近づいた。  完全に白目を剥いている少年の手を取ると、もう片手で手錠をかける。 「ええと、一五二九(ヒトマルニキュー)、一般人への暴行と、管理官への公務執行妨害により逮捕」  ガチャンと手錠がしっかり固定されても、少年は目を覚ますことはなかった。  鷹也が真白を振り向くと、彼女はじっと立ち尽くしている。  その顔は青く、驚くほど張りつめていた。
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