04 白昼の出来事

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 だというのに、瞳はどこか遠くを見ているようにぼんやりとしている。  真白の肩を掴んで揺さぶると、ようやく目があった。 「大丈夫か?」 「当たり前でしょ」 「その割に顔が青いけど」 「このくらい問題ない。走ったから疲れただけ」 「無理するなよ」 「無理なんてしてない」  真白は明らかにムッとした。  佐々が配備していた護送車がやって来たのは、逮捕からすぐのことだった。  意識を失ったままの少年は、研究所に搬送され詳しい検査を受けることになる。  規制線が敷かれた近辺にはすっかり人気がない。  鷹也は収容を担当していた研究員に「あの」と声をかけた。 「『モグリ』のポケットからこれが。被害女性……というか、鈴木真白の髪です」 「お預かりします」  研究所員に、少年のポケットから取り出した毛髪を渡す。  十センチほどの長さの髪を一房。  研究所員は袋を取り出さすと、その中に毛髪を入れた。 「お怪我はありませんか?」 「問題ありません」 「そうですか」  真白は研究所員に答えてから、ストレッチャーに固定される少年の顔を覗き込んだ。  恐らく真白よりも若い、中学生くらいだろう。  連続通り魔事件の容疑者として逮捕された少年の若さに、鷹也は内心動揺していた。  ただ、彼の起こした事件は子供のイタズラで済まされるものではない。
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