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鷹也が顔を上げると、いつもの突っかかるような表情ではなく、心底不思議そうに真白が見ている。
「あんた、いつもあたしを可哀相だって目で見てくるよね。どうして?」
「どうしてって」
「だって、九尾さんとか佐々さんとか、研究所の先生たちもみんな、あたしが力を使うと喜んでくれるのに。どうして?」
「それはお前──」
「あれ? 千代田ぁ?」
素っ頓狂な声に名前を呼ばれた。
驚いて振り向くと、目を真ん丸くした隼がこちらを見ていた。
外回りの途中だろう、スーツ姿でビジネスバックを提げている。
(まずい……就業時間中だ……)
凍り付く鷹也と、こちらに歩いてくる隼を、真白は交互に見ていた。
「……誰? 知り合い?」
「職場の先輩」
「え、ヤバいんじゃないの?」
鷹也は小さく頷いた。
(また……なんでこんな状況を……)
勢いに任せて行動していたけれど、よく考えなくても妙な状況だろう。
鷹也は片膝をつき、その上で真白の足を手当てしている。
「お前、勤務中に彼女とデートかぁ? 案外やるなぁ」
「違います、たまたま会っただけで」
「たまたま会って跪いて靴履かせてあげんの?」
「……この子が転んだんで……」
苦しいことは分かっている。
だからこそ、それ以上何も言わず、手当てを続けて隼に背中を向け続けた。
隼は「ふぅん」と含みありげに口の中で呟いた。
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