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それから、真白にきちんと体ごと向き直って、爽やかに笑いかける。
「こんにちは。俺は千代田の会社の先輩で、鈴木隼って言います」
「――どうも。千代田さんの知り合いで、鈴木真白です」
知り合い、に力を入れて真白が言った。
その瞬間、隼が横目で鷹也を見たが、鷹也は気付かないふりをした。
流石にもう手当ては終わった。仕方なく一歩下がって、ふたりのやり取りが終わるのを待つことにする。
「真白ちゃんって呼んでもいい?」
「構いませんけど」
愛想もそっけもない真白だが、隼は嬉しそうに「ありがとう、真白ちゃん」と声を弾ませた。
真横で棒立ちになっている鷹也の肩を、パシンと隼が叩いた。
「なんだよー、千代田ー。こんな可愛い知り合いがいたなら紹介しろよ~」
「え、なんでですか」
「え、まさか彼女?」
「まさか」
真白が首を振ると、「だよね~」と隼が相槌を打った。
「彼女じゃないなら、別に紹介してくれたっていいだろ。こんなに可愛い子、お前にゃ勿体ない」
隼の言葉に気分が浮上したのか、真白の口角がくっと上がる。
「あっと、ごめん。俺、もう行かなきゃ。真白ちゃん、今度会ったら、俺とデートして」
「えー、どうしようかな」
「そう言わないで、御馳走するよ~。じゃあな、また明日」
最後だけ鷹也に向けて、隼は真白に手を振り、去って行った。
真白も笑ったまま手を振り返す。
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