04 白昼の出来事

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 本当に時間がないのだろう、隼は流しのタクシーを捕まえて、仕事に向かった。  隼を乗せたタクシーが完全に見えなくなってから、すっと真白の表情が消えた。 「──……あの人、なんか変な人だね」 「変……?」 「深い意味はないけど、なんていうか……」  真白は隼の去った方向を眺めながら、微かに首を傾げた。 「視られてるって感じたの。『見』てるんじゃなくて、『視』られてる。分かるかな?」 「お前に気があるんじゃないの」  心底馬鹿にした様子で、真白が隼を振り向いた。 「あんた何を見てたの?」 「ナンパされてただろ」 「あれは鷹也をからかったんでしょ」  真白は肩を竦める。  からかわれた? そう言われも鷹也にはピンと来なかった。 「──本当、あの人、ただの先輩なの? こんな風に感じることなんて、あたし、滅多にないんだけど」 「……一目惚れ?」 「それ、本気で言ってる?」  今度は睨み付けられた。 「そういう意味じゃなくて、能力者なんじゃないのってこと」 「それは違う」  きっぱりと答えることが出来る質問だった。  違う。  彼は『能力者』じゃない。何も見えない。  能力があれば見えるはずだ。真白はいつ見ても白い光に包まれている。  だが、隼には何の色も光も見えない。 「ふうん……ケース・ゼロがそういうなら、そうなんだろうね」
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