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真白はまだ納得は出来ていないようだったが、そのあとは何も言わなかった。
追及しても隼から何も引き出せないのは目に見えている。
「そろそろあたしは大学に行くけど、鷹也はどうするの?」
「巡回」
「巡回して、『モグリ』と出会うことってある?」
「ほぼないな」
いずれの能力者も大抵は十代をピークに能力的に衰えていく。
思春期に能力が最も発見され、当局に登録されるためだ。
鷹也たち管理官は巡回を介して、まだ見つかっていなかったが能力者や、能力を取り戻した者はいないかを確認することが主たる業務だ。
だが、ほとんど先手を打てることはないと聞いている。
露見するのは事件か事故。
どちらもよい経過をたどることは少ない。
真白に靴を履かせて、鷹也は立たせるために手を差し出した。
その手をちらりと見たけれど、真白は手を取らなかった。
「それでも回らないといけないなんて、大変ね、……っと」
立ち上がりながら、真白がぐらつく。
「馬鹿!」
真白の腕を掴んで支える。彼女の顔は完全に痛みで歪んでいた。
「固定しただけだ、普通に動けるわけじゃない」
「でも……」
「こんなに腫れてるんだから、今日は病院に行くか大人しく帰れ」
「……大丈夫」
「研究所に嘱託医もいるだろ?」
「大丈夫だってば!」
頑なに真白は拒否をした。
鷹也の腕を振りほどこうと真白が足に力を入れる。
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