04 白昼の出来事

15/15
前へ
/134ページ
次へ
「大丈夫です、そんなに新しいものじゃないので」  不思議そうにしながら、真白はその場で何度かくるりと回った。  トントン、と痛めた足のつま先で地面を叩いても、表情を歪むようなことはない。 (ありえない。あんなに腫れていた足を、ハンカチで固定したくらいで痛みが引くわけがない)  真白が普通に足をついて立っている姿を見て、鷹也の中の確信は強くなった。 「あの、ありがとうございます。自分ではうまく出来なかったので」 「いえ。とんでもないです」  頭を下げた鷹也にも女性はにこやかに頷くだけだ。  その色は見る間に納まっていく。  目を凝らせば、微かに見えるようなその程度の色になった。 (治した……?)  ハンカチはまだ微かに真珠色を帯びている。 「じゃあ、失礼しますね」 「あの、お名前は?」  鷹也が呼び止めると、女性は少しだけ眉を上げた。 「伊藤です、伊藤瞳(いとう・ひとみ)と言います」
/134ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加