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「大丈夫です、そんなに新しいものじゃないので」
不思議そうにしながら、真白はその場で何度かくるりと回った。
トントン、と痛めた足のつま先で地面を叩いても、表情を歪むようなことはない。
(ありえない。あんなに腫れていた足を、ハンカチで固定したくらいで痛みが引くわけがない)
真白が普通に足をついて立っている姿を見て、鷹也の中の確信は強くなった。
「あの、ありがとうございます。自分ではうまく出来なかったので」
「いえ。とんでもないです」
頭を下げた鷹也にも女性はにこやかに頷くだけだ。
その色は見る間に納まっていく。
目を凝らせば、微かに見えるようなその程度の色になった。
(治した……?)
ハンカチはまだ微かに真珠色を帯びている。
「じゃあ、失礼しますね」
「あの、お名前は?」
鷹也が呼び止めると、女性は少しだけ眉を上げた。
「伊藤です、伊藤瞳と言います」
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