05 善悪の基準

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 記録上、伊藤瞳の能力喪失認定には間違いがない。 「お待たせ、ブラックだったよね?」 「あ、はい。ありがとうございます」  佐々がコーヒーを鷹也に差し出した。 「何見てるの、鷹也くん。個人ファイル?」  目敏く見つけられ、端末を覗き込まれる。 「この人、どうかした?」  特に記憶に残るような顔ではない。平凡を絵に描いたような証明写真を見て、佐々が尋ねた。  鷹也は一瞬逡巡したものの、口を開いた。  佐々は警察から出向して、事務方として研究所に勤めて長い。  色々なケースを事務処理上で見ているはずだ。 「今日、ひとり『モグリ』を捕まえたじゃないですか」 「あー、髪の毛切る通り魔!」  佐々は身を乗り出して、険のある言い方をした。 「最悪よね、真白ちゃんの綺麗な髪切ることになっちゃって。それに折角の能力を悪いことに使うなんて間違ってる」 「その時に真白が怪我したんですよ」 「えっ? 大丈夫なの?」  驚いた様子の佐々は鷹也はため息を吐いた。 「やっぱり、研究所には戻って来てなかったんですね」 「うん、戻ってないと思う……うん、戻ってないね」  佐々はスマートフォンを覗き込む。  慣れた手つきで何かを確認している。  その手元を眺めていると、彼女はくすりと笑った。 「真白ちゃんは研究所育ちで、能力も強いから、監視してるの、GPS管理ね」 「そう、なんですね」 「鷹也くんも確認出来るよ?」 「あ、いや……俺は……」  自分のような能力者と、真白のように保護されて育った能力者では全く勝手が違う。
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