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記録上、伊藤瞳の能力喪失認定には間違いがない。
「お待たせ、ブラックだったよね?」
「あ、はい。ありがとうございます」
佐々がコーヒーを鷹也に差し出した。
「何見てるの、鷹也くん。個人ファイル?」
目敏く見つけられ、端末を覗き込まれる。
「この人、どうかした?」
特に記憶に残るような顔ではない。平凡を絵に描いたような証明写真を見て、佐々が尋ねた。
鷹也は一瞬逡巡したものの、口を開いた。
佐々は警察から出向して、事務方として研究所に勤めて長い。
色々なケースを事務処理上で見ているはずだ。
「今日、ひとり『モグリ』を捕まえたじゃないですか」
「あー、髪の毛切る通り魔!」
佐々は身を乗り出して、険のある言い方をした。
「最悪よね、真白ちゃんの綺麗な髪切ることになっちゃって。それに折角の能力を悪いことに使うなんて間違ってる」
「その時に真白が怪我したんですよ」
「えっ? 大丈夫なの?」
驚いた様子の佐々は鷹也はため息を吐いた。
「やっぱり、研究所には戻って来てなかったんですね」
「うん、戻ってないと思う……うん、戻ってないね」
佐々はスマートフォンを覗き込む。
慣れた手つきで何かを確認している。
その手元を眺めていると、彼女はくすりと笑った。
「真白ちゃんは研究所育ちで、能力も強いから、監視してるの、GPS管理ね」
「そう、なんですね」
「鷹也くんも確認出来るよ?」
「あ、いや……俺は……」
自分のような能力者と、真白のように保護されて育った能力者では全く勝手が違う。
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