05 善悪の基準

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 それでも、真白が監視されているというのは、当然かもしれないが、どうしてもいい気分はしない。 「怪我したなら、早く戻って来てくれるといいのに」 「どこにいます?」 「大学だね……この春から、入学してるから」 「これはまではどうしてたんですか?」 「高校は通信。その前は……ごめんね、私も知らないの。幼年寮は管轄が警察じゃないの」  研究所のなかにも、管轄省庁の違いがあることに鷹也は気付いていなかった。  佐々がこれ以上説明しないということは一介の管理官が知るべきことではないのだ。 「怪我はどの程度なの? 一緒に護送車に乗せちゃえばよかった……」 「捻挫っぽかったんですけど、通りかかったこの人が治してくれて」  佐々はそこまで聞いて、鷹也が個人台帳を確認している意図を理解したようだ。 「すごい偶然ね……、でも、この人能力消失ってなってるけど」 「そうなんですよね」  能力消失したと目されるなら、何故能力が使えたのか。  しかも、確実に自分の意思で行使していると思わしい行動を取れたのか。  能力検査をきちんと受けなかったのか。  けれど、そんなことに、なんの意味があるのか。  鷹也は、街で見た伊藤瞳と、彼女の放った光を思い出しながら、腕を組んだ。 「珍しいわね。わっ、ニーナ・クラギーナみたいなことしてるわよ、この人」  佐々が画面を指さして、声を上げた。  能力認定調査の記録を見ると、PKの中でもやはり、生物に関する物が抜きん出ていた。  彼女は実験用ラットの心臓を一時停止させ、再度心拍を取り戻させた記録があった。
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