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コピー機から吐き出される紙をまとめていると、背後からどん、とタックルされた。
驚いて振り向くと、人好きのする笑顔で隼がこちらを見上げていた。
「千代田じゃん」
「鈴木さん……、痛いです」
「あったりまえだろ。痛くしてんだから」
「……はぁ……。内勤ですか?」
「うんにゃ。午前から外回りだった。これからまた外~」
「お疲れさまです」
実際に営業の外回りを経験しているわけではない鷹也にとって、頭が下がる。
営業がいかに激務かは、見ていて分かる。
管理官としての職務があるとはいえ、みんなとは違う仕事をしていることが申し訳なくなることもある。
隼は特にそうだ。
出張も多いし、大抵社にはいない。
それでも、「疲れた」とは一度も言ったところを見たことがないので、密かに尊敬していた。
いつ何時も明るく、後輩や先輩たちにも愛されている。
「なぁ、千代田」
「なんですか」
「あの子、真白ちゃん、紹介してくれない?」
「──え?」
予想外の提案に、鷹也の思考が一度停止した。
「真白を? 本気ですか? 学生ですよ」
「え? でも高校生とか中学生じゃないんだろ?」
「それは……そうですけど、まだ子供です」
真顔で聞き返す鷹也を見て、隼は訝しげに眉を寄せた。
「あったま固いなぁ、お前」
「……そうですかね」
頭が固いのだろうか。
真白を隼に紹介する……? そう考えると、胸の底がもやもやとした。
大学に入学したばかりだ、頑固で、誰かを頼ろうとしない。
そんな子を、誰かに紹介する事なんて、自分には出来るだろうか……それに……。
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