05 善悪の基準

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 考え込む鷹也の肩をトン、と隼が叩いた。 「別に付き合ってる訳じゃないんだろ? それともあの子の前ではああ言っただけで、本当は好きだとか?」 「それはないです。絶対。断じて」 「じゃあ、いいだろ。あの子見た瞬間、すげー驚いたんだぞ。お前だって分かるだろ?」  鼻息粗く絡んでくる隼に気圧されるようにして、あとじさる。  確かに、はじめて真白を見た時のインパクトはすごかった。  あれほどの強い色を見たのは後にも先にも真白だけだ。  だがそれは、能力者としての話だ。  女性としてではない。 「ま、真白に聞いてみないことには……」  勿論真白を嫌いなわけではない。  そもそも、そんな判断をするほど関係は築けていないというのが正直なところだ。  鷹也の心配を真白は拒絶し続けている、いまでもそんな感じだ。  顔を合わせると真白はツンケンして話を聞いてくれなくなる。  しどろもどろになった鷹也を隼はじっと見上げてきた。 「お前さぁ」 「なんですか」 「モテないだろ」  直球そのものの質問に、言葉を失う。 「それとこれが、関係ありますか」 「あるね。大ありだ。まぁ、いいけど、近いうちに真白ちゃんとの食事会セッティングしろよ、いいな!」 「本気ですか?」 「本気に決まってるだろ。あの子、可愛いじゃん」  と言われても。  鷹也は曖昧に返事をしながら、またコピー機に視線を落とした。 「絶対だぞ! 分かってんな!?」と何度も念を押しながら、隼は去っていく。  三人で食事をするなんて、どう考えても想像が出来なくて、深いため息が漏れた。
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