01 会社にて

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 大抵外回りに出ているので、社内でこうして顔を合わせることは少ない。  ただ、顔が広く、そして、人の顔をとてもよく覚えているようで、鷹也は一度歓迎会で会っただけだったが、その後、必ず声をかけてくれるようになった。  距離感に戸惑ってはいたものの、今ではこうして声をかけるくらいの間柄になった。  鷹也が自動販売機に小銭を入れている横で、隼は肩をゆっくりと回した。 「肩凝りそうだわ。事務仕事苦手なんだよね」 「そうなんですね」 「意外か?」 「はい、仕事ならなんでもできるんだと思ってました」 「おー、随分買ってくれてんじゃんか、うれしいね」  鷹也は彼を見た。  視線が随分と下がる。 「鈴木くん、背がもう少し高かったらね」と女性の先輩たちが話していることを聞いたことがある。 確かに背は低いかもしれないが、それは問題になるほどなのだろうか。 「おい、男前。てめー背ぇ高いからって人様見下ろすんじゃねえよ」 「そんなつもりはないんですけど」  素直に謝ると、隼は鷹也の肩を組んで耳打ちしてきた。 「千代田さぁ、今晩ヒマ?」 「……え。午後も外回りで……それから直帰ですけど」 「直帰かぁ。じゃあ、今日、総務と飲み会なんだけど、来れるよな?」 「無理です」  間髪入れずに返すと、隼がぱちくりと瞬きをした。 「なんだよ、先約か?」 「いえ、妹が家でひとりなんで、遅くなれないんです」 「あー、親御さんが仕事で別居してんだっけ? 中学生なんだもんな妹さん」 「はい、まだ十四です」 「ならしゃーないか」  事情を説明すると、隼は鷹也を解放してくれた。
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