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大抵外回りに出ているので、社内でこうして顔を合わせることは少ない。
ただ、顔が広く、そして、人の顔をとてもよく覚えているようで、鷹也は一度歓迎会で会っただけだったが、その後、必ず声をかけてくれるようになった。
距離感に戸惑ってはいたものの、今ではこうして声をかけるくらいの間柄になった。
鷹也が自動販売機に小銭を入れている横で、隼は肩をゆっくりと回した。
「肩凝りそうだわ。事務仕事苦手なんだよね」
「そうなんですね」
「意外か?」
「はい、仕事ならなんでもできるんだと思ってました」
「おー、随分買ってくれてんじゃんか、うれしいね」
鷹也は彼を見た。
視線が随分と下がる。
「鈴木くん、背がもう少し高かったらね」と女性の先輩たちが話していることを聞いたことがある。
確かに背は低いかもしれないが、それは問題になるほどなのだろうか。
「おい、男前。てめー背ぇ高いからって人様見下ろすんじゃねえよ」
「そんなつもりはないんですけど」
素直に謝ると、隼は鷹也の肩を組んで耳打ちしてきた。
「千代田さぁ、今晩ヒマ?」
「……え。午後も外回りで……それから直帰ですけど」
「直帰かぁ。じゃあ、今日、総務と飲み会なんだけど、来れるよな?」
「無理です」
間髪入れずに返すと、隼がぱちくりと瞬きをした。
「なんだよ、先約か?」
「いえ、妹が家でひとりなんで、遅くなれないんです」
「あー、親御さんが仕事で別居してんだっけ? 中学生なんだもんな妹さん」
「はい、まだ十四です」
「ならしゃーないか」
事情を説明すると、隼は鷹也を解放してくれた。
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