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06 執行失敗
ルルルルルル、無機質な着信音が、電話を告げる。
液晶画面には『佐々』と表示されていた。
席を立ちながら、通話ボタンをタップする。
「はい」
『あ、鷹也くん? 今大丈夫かな?』
「はい、ちょっと待ってください」
廊下の端によって、電話を受ける。
『至急、研究所に来てもらっていいかな、協力要請なの』
「警察ですか?」
『そう、本当に急にきて』
『モグリ』の調査には大きく分けて二種類ある。
一つは警察から『モグリ』の関与が重大とされる案件の調査を依頼され、管理官として調査主導するパターン。
もう一つは、ケース・ゼロの管理官が見かけた能力行使について調査するパターンだ。
基本的には警察からの調査依頼が主で、ほぼほぼ調査はそれに尽きると言っても過言ではない。
「分かりました。今から向かいます」
警察からの至急の養成ということは、危険性が高いはずだ。
鷹也は急いで研究所に向かう準備をした。
ふっと、その脳裏に、伊藤瞳の笑顔が過る。
(…………)
伊藤瞳のような能力行使を見かけた場合、通常なら、調査手続きを取ることになる。
まず、研究所に状況を報告。
いくつかの研究所を束ねる主任統制管理官からの調査指示を受けて調査を開始する。
その際、きちんと警察の案件などと照らし合わせ、緊急性・重大性・悪質性の高いものから調査することになる。
鷹也が着任してから、不法能力行使の疑いありと申し出たケースは、まだない。
彼女は、報告されるべきケースだ。
(いや、まだ分からない……緊急性は高くないはずだ……)
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