01 会社にて

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 ただ、コーヒーを買う鷹也の横で、恨みがましく腕を組む。 「千代田さんも行くなら~って、総務のマドンナがオッケーしてくれたのに……」 「はぁ……すみません」 「憎い。その高身長、顔の小ささ、モデルか俳優かっていう顔面偏差値! なのになんでそんなに淡泊なんだ? 俺ならもっとグイグイいくぞ!?」  こういう時に、どう切り返していいか、いまだに悩む。  別に身長も顔も、親に似ているだけで、特に何かを努力して得たわけではない。  冗談めかして乗っていくような性格もしていないし、かといって「そんなことない」と言って相手を怒らせたこともある。  結局、どんなリアクションをしてもなんだか嫌味なようで鷹也は咄嗟に黙ってしまう。  こういうところが「イメージと違う」と歴代の彼女たちには言い捨てられたのだろうか。 「とにかく、今日はちょっと」 「お前付き合い悪いぞー。当日じゃないならいいんだっけ?」 「はい。ちょっと当日は色々あって」  答える声が少し強張った。  まずいな、と思ったが、言葉が返ってくることはない。 「ふうん」と不満げな声を漏らしながらも、隼は追及してくることはなかった。 「まぁ……じゃあ、いいよ。でもその次は絶対付き合えよな! 再来週の金曜、今度はシステムと飲みだから!」  総務とシステムといえば、社内で一二を争う美女の多い部署だと有名だ。  隼は、ちょくちょく社内外問わず飲み会の幹部を引き受けている。  勉強会と題して各企業の若手幹部候補たちで飲み会をしているところに誘われたことがあったが、あまりにも立場が違うと鷹也は固辞して行ったことはない。
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