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02 研究所
鷹也の『外出先』はいつも決まっている。
会社のある駅前から、バスで二十分の郊外にある。
遠目から見ると工場か何かのように見える、白くのっぺりした白い建物が目的地だ。
建物は木立に覆われ、その外側を高いフェンスで囲われている。
門衛が常時監視する門を通れば、全景が見える。
地上三階建てのそこには窓もなければ、看板もない。
本当にひたすらに真四角の、白い建造物……としか言いようがない建物だ。
入口のそばに立っていた小柄でややぽっちゃりした女性が鷹也をみつけて、人懐こい笑みを浮かべた。
咄嗟に時計を見ると、約束の時間ギリギリになってしまっていた。
鷹也は慌てて駆け寄った。
「すみません、佐々さん」
「大丈夫、今降りてきたところ。気にしないでね」
佐々美穂。鷹也の尋ね人の一人だ。
彼女は首から下げたパスケースをかざして、ドアのロックを解除した。
「どう? 会社、慣れた?」
「なんとか……」
鷹也の返事に、佐々はおかしそうに肩を竦めた。
「でも、鷹也君が新社会人ねえ、新鮮だなぁ」
「まだ慣れません……ネクタイとか特に……」
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