02 研究所

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「大丈夫大丈夫。その内スーツが一番楽ってなるよ」  佐々に先導されて歩く廊下は人気がなく、がらんとしている。  ここは無臭だ。  建物からなんの匂いもしないというものは、なんとなく恐ろしく、そして不気味に感じてならない。  ここに出入りするようになって何年も経ったけれど、いつも首の後ろをそっと冷たい手で撫でられたように、悪寒がする。  佐々はひとつの部屋の前で立ち止まる。  また、ここにも何の表示はされていない。  ドアの横、ロックを解除するためのセンサーがあるだけだ。  ただ、この部屋は流石に覚えている。  所長室だ。  何度か呼び出されたことがある。 「さ、九尾(ここのお)さんが待ってるよ」 「はい」  その名前に鷹也は、少し緊張した。  息を止めて、姿勢を正す。  鷹也の微かに強張った顔を見て、佐々はふふっと微笑んだ。 「じゃあ、準備はいい?」 「お願いします」  佐々はまた、パスケースをかざしてドアを開錠した。  ガチャンと、廊下に音が響く。 「九尾所長。千代田鷹也くんをお連れしました」 「どうぞ~」  ハスキーだが、軽い調子の声が返って来た。
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