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柊の父親、桂一がクリスチャンであるかどうかまでは陽光は知らない。
ただ、柊が入学した高校が確かキリスト教系だったと記憶している。
全寮制の男子校だった。
父親の母校で、たっての希望だから進学したと当時の柊から聞いた覚えがあった。
併せて柊が「本当は陽光と一緒の高校に行きたかったのに・・・・・・」と喉の奥から絞り出すように告げてきた時の声と顔とも陽光の記憶に新しい。
実に口惜しそうで、そしてとても悲しそうでもあった。
もう四半世紀近くも前の出来事だというのに――。
今度は陽光が手酌をした酒を飲み、告げた。
「桂一おじさんにとってはおまえに譲る時期だったんだろう」
「こんな時期にか⁉」
気心が知れた幼馴染みへの甘えもあって思わず言葉も体も前のめりになってくる柊とは対照的に、陽光はどこまでもどっしりと腰を据えている。
語る声までもが重い。
「こんな時期だとは多分、世界中の人間が思っている」
「・・・・・・」
陽光の、幼馴染みとしての歯に衣着せぬ物言いに柊は口を閉ざす。
陽光はいつだって正しくて平らかだと改めて感じる。
昔から誰に対しても変わらず優しく、常に平等だったことを思い出した。
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