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柊が半ば冗談めかして、もうなかばは脅かすようにして陽光へと言う。
「触ると突き刺さって――、痛いぞ」
自らの棘を退けるかのように体を右へと翻す。
その拍子にユラリと揺れた柊の左腕の手首を陽光は取った。
「そうか?俺には全然痛くない」
「――本当に?」
「あぁ」
取られた腕が手繰り寄せられる。
すっかりと納められた陽光の胸の中で、柊がそっと打ち明けた。
「そう言ってくれるのは昔も今も陽光だけだ・・・・・・」
生まれた時からずっと一緒だった陽光との間に、『大きさ』の違いを感じるようになったのは一体いつの頃からだっただろう?
それは単なる身長と体格との差だけにとどまらず、人の器にまでに及ぶと柊は考える。
圧倒されるのは、当の陽光がそのことをまるで鼻にかけていない点だった。
もしかするとただ気付いていないだけなのかも知れない。
こんなにも自分が頼りにしていて、又こんなにも自分を支えてくれていることに――。
全く敵わないと、陽光に白旗を揚げる思いで柊は告げた。
「今夜もおれの無理をきいてくれた。――おれを助けてくれた」
「俺もうれしかった」
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