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しかし柊の本性は外見などではなくその名が表していると、生まれた時からの付き合いであるが故に思う。
ひどく鋭い、尖った棘を持っているのだ。
元もと植物の柊は疼き、――その葉に触れた手がヒリヒリと痛むことから名付けられたという。
陽光がそのことまでをも知ったのならば、きっと深くうなずいていたことだろう。
陽光は真っ黒な酒瓶を柊の方へと差し向けた。
「おまえ、頼られてるんだよ。俺なんてまだ修行に放り出されている身の上だ。いい加減四十も近いっていうのに」
「・・・・・・」
柊は無言のまま、でも素直にぼやく陽光へと盃を差し出した。
満たされた酒をこれまた一気に飲む。
そして酒の香りと共に言葉を放った。
「――この世には全てに時があり、それぞれ時期がある」
「何だそれ?」
柊には間が抜けた陽光の返事はまるで気にならないようだった。
空になった盃に目を落としてつぶやく。
「親父の口癖。聖書に出てくる文章だ。だからって、よりにもよってどうしてこんな時期に――」
「・・・・・・」
陽光には語尾が消えた弱よわしい言葉が柊の本心、――本音に聞こえてならなかった。
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