3/3

72人が本棚に入れています
本棚に追加
/19ページ
 しかし柊の本性は外見などではなくその名が表していると、生まれた時からの付き合いであるが故に思う。 ひどく鋭い、尖った棘を持っているのだ。  元もと植物の柊は(ひひら)き、――その葉に触れた手がヒリヒリと痛むことから名付けられたという。 陽光がそのことまでをも知ったのならば、きっと深くうなずいていたことだろう。  陽光は真っ黒な酒瓶を柊の方へと差し向けた。 「おまえ、頼られてるんだよ。俺なんてまだ修行に放り出されている身の上だ。いい加減四十も近いっていうのに」 「・・・・・・」  柊は無言のまま、でも素直にぼやく陽光へと盃を差し出した。 満たされた酒をこれまた一気に飲む。 そして酒の香りと共に言葉を放った。 「――この世には全てに時があり、それぞれ時期がある」 「何だそれ?」  柊には間が抜けた陽光の返事はまるで気にならないようだった。 空になった盃に目を落としてつぶやく。 「親父の口癖。聖書に出てくる文章だ。だからって、よりにもよってどうしてこんな時期に――」 「・・・・・・」 陽光には語尾が消えた弱よわしい言葉が柊の本心、――本音に聞こえてならなかった。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加