2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
私はすぐに旅に戻った。あの子の足跡を辿る旅に。
そうしてその果てに――見つけた。
花に囲まれ、静かに眠るあの子を。
帰れない、その絶望の果てに、眠りを選んだあの子を。
まるで白雪姫のようだ、と思いながら、私はあの子の手を取った。
「……起きて。迎えに来たよ」
「待ち合わせの場所に来る前に、世界ごと迷子になった君を」
「迎えに来たよ。ひとりぼっちでこの世界を救った君を」
「長い長い生と、帰れないことに絶望してしまった君を」
「……起きて。帰れる方法はまだ見つかってないけど、もうひとりじゃないから」
「……起きて。ねえ、一緒に、帰ろう」
閉じられた瞼が震える。ゆっくりと開かれていく瞳を、私はただじっと見つめていた。
「……夢かな。きみがいる。世界に隔てられて、もう会えないはずのきみが」
「夢じゃないよ。遅くなったけど、やっと、迷子になった君を見つけた」
「夢じゃないのか。……夢じゃ、ないのか」
そう言ってあの子は微笑んで、涙を一粒こぼした。
私はそっと、その肩を抱き寄せた。
最初のコメントを投稿しよう!