2人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
あの子の足跡を、辿っている。
いつかに突然消えた、あの子。
あの子もまた、この世界に召喚されたのだと気づいたのは、帰る術を探すため、過去の召喚人の歴史書を紐解いていた時だった。
探しても、探しても、探しても。見つからないはずだ。
世界ごと、違うところにいたのだから。
あの子についての最後の記述は、『消息不明』。
だから、私は、あの子の辿った道のりを、追ってみることにした。
あの子は精霊の加護が薄まったこの世界をどうにかするために召喚され、旅をしたらしかった。
現在では精霊の加護が戻っているとのことだから、あの子は課せられた役割を果たしたのだろう――そして、消えた。
どこに消えたのか。生きているのか。死んでしまったのか。
この世界で、異世界人は不老長寿になるというから、まだ生きている可能性はある。
まずは精霊へとコンタクトをとるためにあの子が訪れた場所を訪れた。
あの子はよほど精霊に礼を尽くしたのだろう。彼らは総じて私を――召喚人を歓迎した。
だけど、あの子のことを尋ねると、彼らは曖昧に口をつぐんだ。
何か知ってる。だけど、私には話さないだろう――ただの召喚人である私には。
私はそのまま精霊との仲を深めることにした。
元々好意的だったのと、あの子の知己だということが効いたのだろう、しばらくして、彼らはそっと私に囁いた。
――あの子を一人で朽ちさせないで、と。
最初のコメントを投稿しよう!