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プロローグ──
――おじいちゃん、死んだんだって。おばちゃん、魔法つかいなんでしょ? おじいちゃんなおせないの?
この言葉を、やけにはっきりと覚えている。
それは、何の前触れもなく、父が亡くなり、珍しく、通夜から告別式までの外泊も認められたその日のことだ。
喪服を着て駐屯地から真っ直ぐ実家に帰った。
妹は婿を取って家を継いでおり、父親は妹家族と同居していた。
つくなり父親にすがりついて泣いた彼女の横に座っていた姪っ子が、彼女の袖を引いて言ったのがその一言だった。
彼女は息が止まり、不思議そうにしている姪を、ただぽかんと見ていた。
まだ四つになったばかりで、死が何か分かっていないのだろう。
子どもらしいつぶらな目でこっちを見上げて、
――おばちゃん、魔法つかいなんでしょ? おじいちゃんなおせないの?
と尋ねてきた。
彼女は反射的に黙ってしまった。
この世界には確かに、魔法が存在し、彼女は『魔導士』と呼ばれる職業についている。
魔法は万能ではない。
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