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荒井は酔ってもいるのか、だいぶ末次に絡んでいる。逆に末次の方は、ちらりと見たところ、顔に赤みも出ていないし、冷静な感じだ。
(末次くんってそんなに揉めてるイメージないんだけどな。身持ちかたそうっていうか、炎上とか一切しないし)
末次渚は子役からの舞台役者だ。今は商業演劇の割合的にも2.5が多いので、そっちのイメージも強いが、大手劇団の客演にもよく呼ばれるし、幅広く活動をしているし、業界内での評判もピカイチで良い。
演技力や華も勿論のこと、SNSをあまりしないのもあって、非常にクリーンなイメージだ。ファン界隈からは「王子」と呼ばれており、「王子についておけば間違いないから……」「夢みさせてくれる……」との評判である。
そんな末次だったが、流石に荒井からの言葉に耐えかねたのか、はあ、と大きなため息をついた。
「雅仁……お前、ファンにこだわりすぎなんだよ。大事にしてるのはわかったけど、どうしようもないことだろ。あと、この前の飲み会でも思ったけど、ファンとか繋がり食い過ぎだし、それを周りに言い過ぎ。そろそろ切っとかないと、女に足元すくわれるよ」
「っ、余計なお世話だよ!この……っ」
「俺は忠告したからな?」
「っ……!」
(うわ、まずい!)
やばい、と思った瞬間には大和田はそのバルコニーへの扉を開けて、あれ?と声をかけた。荒井が慌てて末次を掴んでいた手を離す。

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