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会社でトイレが一番落ち着く場所
私は、広告代理店で働く《青山 涼子》。
今は仕事が恋人のバリバリのキャリアウーマン。仕事の後輩からは「りょこ先輩」なんて呼ばれて、昼休みには仕事の相談、恋の相談にと引っ張りだこで忙しい。カウンセラーじゃないんだぞ。
でも──
本当の私はみんなが思うようなデキル女とは違う。
新卒で入った物流会社を1年で辞めた私は、未経験の第二新卒で畑違いの今の会社に入社した。
入社当時は、いきなりお局の下に配属され、毎日理不尽な扱いを受け泣きながら仕事を覚えた。
そうやって我慢と我慢に、少しの努力を重ねた結果、25歳の最年少でプロジェクトリーダーを任されることになった。
学生時代にもたった一度だって表彰されたことがなかったこの私がなんと、社長賞ももらった。
正直、みんな仕事にやる気がなさすぎる。みんなが本気を出したら、私なんて平凡な社員のままだった。自信なんて全然ない。仕事は楽しい時もあるけど、大体、辛い。プロジェクトリーダーなんてしたくない。静かにしごとがしたい。それなのに断れない。
──流されやすいって分かってる。
今日はそんな涼子のチームに、
新メンバーがやってくる。
これまで何人もの人がチームを去っていった。ついこの前までいたメンバーが辞める時、上司で部長の八神は「青山は厳しすぎる、自分にも相手にも」と言った。
その場では「そうですね」なんて言ったけど、そんなことない、はず。、
だって、私はろくに休憩だって取れてない。仕事量にだって明らかに差がある。いくら残業代が1分単位でもらえるからって、みんなが終えずに帰った仕事を片付けてから帰る時には涙が出そうになる。
毎日ヘトヘトで、土日も休んだ気がしない。
《このドラマは、アラサーOLによるアラサーのための物語である》
なんて妄想してたらトイレの音姫が切れた。
今のは殆ど妄想。
事実を基に構成された、フィクション。
私はこうして個室に1人。
心を休めている。
他にも共感してくれる人いると思う。
立ち上がった時、
ふと目に付いたのは、個室の隅に転がった
トイレットペーパーの芯。
──私だ。
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