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そうとわかると商人は、意気込んで荷物を下ろした。
「いやぁ、お侍様からそのようにお声をかけて頂ければ、商人冥利に尽きるってもんですよ。
それにこれ、なんでも落ちてきた雷を打った刀だって言うもんでしてね。眉唾物だーって、他のお客は信じちゃくれないんですから!」
「私もそのように、人づてに聞きましてな。どうも最初は信じられないと思ったのだ。
だが聞けば、その刀を打ったのはあの村正だと言うではないか。その辺りは、どうなのだ?」
「えぇ、あの名刀工、村正の作品です。それを言うとまた眉を潜められたもんですが──」
商人は男へ桐箱を差し出した。
男は辛抱堪らないといった勢いで蓋を開き、その刀身を覗かせる。日の輝きを奪い、夜を広げるような藍色の輝き。
それを確かめると満足そうに笑み、刀を鞘へ納めた。
「お侍さんは、まるで疑わないんですねぇ」
「……疑うものか。雷を打ったなどと口走るのは、酔っ払いかあの男くらいのものだ」
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