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商人へと袋が手渡される。中を見ずとも、ずしりと重さが伝わった。
「つまらぬ話であったかな。
ともあれ、これが代金だ。足りなければ、手間をかけさせるが後日またこの場所で渡そう」
恐る恐る開いて確認すると、商人は言葉を失った。商人が売値としていた額の十倍だったのだ。
「なっ……! いや、お侍さん、こりゃあいくらなんでもおかしいでしょう?」
「遠出をさせた気持ちというものだ。多いというのであれば、次の話があった時はいち早く伝えてもらえれば良い」
「そうは言いましても……こりゃあ、頷けませんよぉ!」
「む、そうであったな。柳之助だけでは通じるものではないか……江城で話があれば私の耳にも届くでだろうから、そのように願いたいな」
返そうと伸ばした手を取ろうともされず、話には置いていかれた商人は、諦めて懐へとしまいこんだ。
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