たどり着いた場所

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『次は礒咲(いそざき)ぃ~、礒咲です』  ダミ声の車内アナウンスがまどろみかけた私の意識を現実に引き戻した。一両列車の暖房は山手線に匹敵する心地よさだ。  車窓から見えるのは何も(うわ)わっていない畑。  畑、畑、畑……真冬に広がるだだっ広い農地は、色彩の乏しい荒野(あれの)にしか見えない。 「本当に何もないのね」  視界の大半を占めるのは畑で、時々常緑樹の林がある程度。遠くに民家の屋根らしいものが見えた。 「こんなところで何してるのよ」  父がどうしてこんな田舎に骨を(うず)めようと思ったのか全然理解できなかった。もっとも、向こうも同じだろう。娘の気持ちなどこれっぽっちもわからないはずだ。  父が母と離婚したのは私が中学に入った年。以来十四年間、顔を合わせることはなかった。別れた理由は父の浮気。  それなのに、どうして人を使って手紙なんて――。
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