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つまり各乙女ゲームで人気のない攻略対象をこの最果てに連れて来て、少しは人気が出るようにする施設のようです。
「……最果てなら最果てとして、放っておけばいいのでは?」
辛辣な方である凛音もついそう提案してしまいます。それだけその最下層と言われる攻略男子が哀れに思えたのです。しかしモルは笑顔のような顔で首を振ります。
「ダメモル。あいつらは腐ったみかんモル。周りに悪影響を与えるし、かと言って乙女ゲ界はまだまだ数が足りないから切り捨てられないモル」
より辛辣なモルはそう答えました。母数が少ないからこそ一件の問題が大きく思えるし、戦力外を復帰させたいという事なのでしょう。
たしかにここで凛音が腐ったみかんを攻略すれば、それは腐ったみかんではなくなります。戦力になるという証明です。それが乙女ゲーム界を救うという事になるでしょう。
「ここではモルはナビする妖精モル。これから凛音をサポートするモル」
「ええ、妖精……?」
改めて自分の立場を説明するモルに、凛音はドン引きしました。妖精の口から『腐ったみかん』などと聞きたくないものです。
「ていうか妖精って、古っ」
「古い!? 古いってなんだモルっ? 無条件でどんな情報でも教えてくれる友達キャラの方が今の流行りモル?」
「それも古いわ」
またしても凛音は記憶のないわりに何かを知っているようなつっこみを入れました。妖精による恋愛のナビゲートは一昔前の定番のようです。
「……まぁいいモル。攻略対象はダメなやつなんだから、凛音にはその調子でびしばしつっこみを入れて教育してほしいモル」
「教育? 恋愛じゃなくて?」
「まずは更生モル。正直、あのままの攻略対象たちが凛音をときめかせるとは思えないモル」
さらにひどい言いようです。さすがのモルも、数多の乙女にスルーされた攻略対象達と恋愛するのは難しいと考えたのでしょう。まずは更生と、それから恋愛。意外にやることが多いです。
凛音には一応やる気というものがあります。記憶がないので元の世界への執着はないのですが、やらなくては話が進まないと思っているからです。絶対に『はい』を選ばないと先に進めないループ会話だと察したからです。
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