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「やっぱり君は面白い子だね」
しかし彼がそう言葉を発する前に、女子生徒が三人やってきました。三人の女子生徒は道を塞ぐようにして凛音を睨みつけます。ただ、その顔つきは碓氷以上に印象に残りません。なぜなら彼女達は乙女ゲーム界のモブだからです。
「碓氷君、私達の誘いを断ってこんな女と一緒にいるなんて、どういうこと!?」
「部活の勧誘でよばれてるって言ったじゃない!」
「こんな女、碓氷君には釣り合わないわよ!」
モブはモブでも学園の王子様キャラにつきものの、親衛隊系モブ三人組です。王子様の魅力を称え、敵になりそうなヒロインを排するモブ。そんな知識が凛音にはあります。
どうやら更に碓氷イベントが発生したようです。
「君たちやめてくれ。彼女は僕の友人だ。釣り合うとかそういう話ではない!」
凛音の前に立ち庇う碓氷。今までで一番乙女ゲームらしい光景です。不覚にも凛音の心は動かされます。こういう所を出せば、彼は元の乙女ゲームでも人気が出たかもしれません。
「なによっ、友人だなんて図々しい! どうせ貴方も碓氷君の家柄にしか興味ないくせに!」
一方的に絡まれる形で出会いイベント発生中の凛音は、その言葉にいらっとしました。凛音は碓氷家には興味がない。ついでにいうと碓氷にも興味がなかったのです。
気づけば凛音はかばってくれる碓氷を押しのけ、モブ女子に向かいあいます。
「あなた達は碓氷君のどこを気に入っているの?」
「は?」
「答えて。人をとやかく言うくらいなら、さぞ立派な所に惚れ込んでいるんでしょ?」
三人相手でも凛音は負けません。力強く問います。困ったのはモブ三人です。彼女達こそ家柄にしか興味がないのですから。そのうち一人がこの場をなんとかしようと適当な答えをします。
「あ、頭のいいところとか……」
「じゃあその頭のいいエピソードを聞かせてよ。学年一位とか、そういう数字的なものじゃなくて」
それを聞くとモブ女子は黙り込みました。頭のいいエピソード、ないようです。
次に別の女子が答えます。
「う、碓氷君は運動神経がいいの。そこを素敵に思って何が悪いの?」
「そう、素敵だね。で、なんの競技で貴方はそう思ったの?」
凛音は続きを促してもモブ女子は答えず縮こまります。これも詳細が語れるほどではないようです。
最後のモブ女子が答えます。
「家柄とは違うけど、碓氷君の育ちの良さや教養だって十分な魅力だわ!」
「そう、育ってきた環境から身につく事は素敵だね。で、その話詳しく」
「それは……」
やはり最後のモブ女子は答えることがありませんでした。凛音は深くため息をつきます。そして大きく声を張り上げます。
「わかったでしょ。碓氷君はなんでもできるがゆえに薄っぺらいの! けどそんな彼に近付く女子を三人がかりで蹴落とすあなた達はもっと薄っぺらい!」
それは三人のモブ女子に刺さるセリフでした。しかし同時に碓氷にも刺さります。モブ女子は三人で視線を合わせて適当な理由を付けて逃げ去り、碓氷はその場に膝から崩れ落ちました。
どうにかモブ女子だけを追い払う事はできなかったのか、と遠くで観察していたモルは思います。
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