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『ベター・コール・ソウル』とCGI
2022/5/22
私、海外ドラマの『ブレイキング・バッド』が大好きなもので、現在ファイナルシーズンが進行中のスピンオフドラマ『ベター・コール・ソウル』も当然のように大好きです。そして、この番組では毎週の配信と並行してInsider Podcastという音声番組が配信されているのですが、これがなかなかに興味深いです。各エピソードのスタッフや出演者が撮影の裏側を語る番組なのですが、DVDのオーディオコメンタリーなどが大好きな私にとっては宝のようなコンテンツなわけです。
で、そんな裏話のなかでちょっと面白く感じたのがCGの話です。『ベター・コール・ソウル』はざっくり言うと主人公の弁護士が徐々に生き方を変えていく話でして、車がロボットに変形したりしない現実的な世界観の話なものですから、普通に考えるとCGなんて使う必要がなさそうに思えるんですね。ところがです。このポッドキャストを聞いていると「実はあそこCGなんです」という話がちょくちょく出てきて驚くのです。
たとえばお酒のコルクが落っこちて地面を転がるという場面のコルクがCGだったり、停まっている車を映したシーンのフロントガラスがCGだったりするのです。
コルクのシーンはある程度長いカットの最後にポロっと落ちたものがちょうど画面の真ん中に転がってきてそこにカメラが寄っていくというもので、言われてみれば確かに、転がるタイミングや軌道が絵的に完璧でして、これを意図的にやるのは相当難しいだろうことが想像できます。フロントガラスについては、主に反射の具合が好ましくなかったのでCGを使ったとのことでした。
つまり、物理的に如何ともし難い部分をCGで置き換えて理想の絵作りを実現しているわけです。なんというかこの、現実に存在し得ないものではなく、あり得るんだけど撮影の実際上「準あり得ない」的な隙間をCGで埋めている感じがとても面白いなあと。そして私が気付いていないだけで、そういった調整は様々な場面で行われているのだろうと思うと、虚構の世界を眺める視点にどこかドキッとさせられる新たな角度が加わる感じがします。伝わりますか。
だから何なのかと言うと、これ以上は上手く言語化できていないのでこの辺りで濁すのですが(気軽に書くという主旨のエッセイなので話が中途半端でも恐れません)、しかしこれは何というか、鏡を正面から映したシーンにカメラが映り込んでいないことに気付いた瞬間ドキッとするのと同種の現象な気がします。技術的な感心と虚構性の揺らぎが一緒にやって来て興奮すると言いますか。CGだと分かりきって見るCGとは根本的に違う何かが起きている感じがします。
そしてこれは、言われなきゃ分からないレベルのCGがひょいひょい出てくる時代になったからこその現象であり、これからはそういう使い方のCGもどんどん増えていくのだろうと思うと面白い……というか、既にどれぐらいがそうなっているのか把握できないわけですから、実際既に面白いわけです。極端なときは俳優がまるごとCGだったりする時代ですからね。いやはや。
とりあえず以上です。
ちなみに、鏡が出てくるシーン自体についても色々言いたい気がしてきました。映画『コンタクト』のとある鏡シーンに関する解説動画とか、頭がこんがらがってとても面白いです。他にもアニメにおける鏡や、ゲームにおける鏡についても幾らか思うところがあります。いつか何か書くかもしれません。
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