一歩、また一歩。

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 起きるともう昼の一時だったが会社は休みだ。遅めの昼飯を摂り、ようやく落ち着いた美咲は、足跡のことを考えた。何かが起こるというのは自分の思い過ごしだったのだろうか。いずれにせよ何事もなかったのだ。これでいい。そう自分を納得させようとしながらも、内心まだ少し恐怖が頭をもたげていたので、そのまま土日も家を出ることなく、ダラダラと過ごした。おかげで体調もだいぶ良くなりはしたが。  結局、全て自分の思い込みに他ならなかったのだろうと納得した美咲は、スーツを着て会社に向かう準備をした。今日は上司にも怒られずに済むだろう。  鞄を持ち靴を履いて恐る恐るドアを開けたが、廊下の足跡も既に消えていた。本当にこれで終わったのだ。そう思ってエレベーターの前まで来た美咲は、資料を机の上に置き忘れていたのに気づいて踵を返した。  危ない危ない、と小さくつぶやきながら靴を脱ごうとしたその時、美咲は見つけてしまった。黒い石で出来た土間の上にあったので見落としていたが、リビングに伸びる廊下へ向かおうとする三つの足跡を。
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