一歩、また一歩。

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 美咲がそれを見つけたのは一ヶ月程前のことだった。近くのスーパーからの帰り際、自宅のマンションのエレベータに向かう途中、ふと廊下を見ると黒い足跡が階段の扉に向かって伸びていた。しっかりと足の指がプリントされた足跡を見て、このマンションに住む子どもが裸足で遊んでいる際に付けたのだろうと思い、特に気にすることもなく美咲はボタンを押した。  それから一週間後、ずっとその足跡が残っているのを見て、管理人が気付いていないのか不思議に思った美咲は何気なくその足跡が伸びている階段を辿ってみた。一段ずつ付いていた足跡は二階と三階の間の踊り場で突如として途切れていた。この足跡の主はどこに消えたのだろう。まさか飛び降りたわけじゃあるまいし。階段から下の駐輪場を覗いた美咲は、その思いがけない高さに身震いした。ここから靴でも履いたのかな。少し違和感を覚えたまま、美咲は自分の部屋がある四階へ向かった。
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