一歩、また一歩。

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 それから10日程経ち、足跡のことも忘れかけていた美咲は、仕事から帰ってきてエレベーターを降りた瞬間、小さな悲鳴をあげた。足跡だ。例の足跡が上ってきている。しかし、美咲が驚いたのはそこではなかった。美咲のマンションは五階建てである。しかし、足跡は五階へは上がらず四階で各部屋のドアが並ぶ廊下の方に曲がって出てきていた。足跡を飛び越えるようにして自分の部屋へ向かった美咲は、ドアを閉める直前に嫌な想像をした。  あの足跡はこれからも伸びてくるのだろうか。そうすると、その終着点は一体何処に。階段やエレベーターから一番遠い部屋に住む美咲は、これ以上自分家の方に足跡が伸びてこないことを願って玄関の鍵を閉めた。
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