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【10】麦の村は奴隷と難民の村?
道中兄弟通し、ライバル通しで色んな会話をした。
まぁ煩わしかったが、一応ルーヴェルの話も聞きつつにはなったが、本当に不思議な現象の話を聞けたりもし、何だかんだで結構勉強になることが多くあった。
時定の話によると、ここに来て数年間の間に時雨と色んな町や村、それに変な境界線みたいなものも見たらしい。
その境界線はルーヴェル曰く " 光 " と " 闇 " の境界線らしい。詳しいことは現時点では聞いていない。
何故なら優先度があるからだ。
今は御館様を最優先で見つけることが重要だからね。まぁぶっちゃけた話、ルーヴェルの言う境界線話は興味がない。
この世界の話は俺たちには関係ない。
あくまでも俺たちは " 異世界人 " だからだ。
こう言っちゃ冷たい言い方かもしれないんだけどね。
出来ることなら協力は惜しまない。が、出来そうに無いものは変な期待を持たせないように協力しない。
その一線は越えないようにしている。
ただルーヴェルの言う " 光 " と " 闇 " の問題は何となくだがきな臭い。
今は先程も話したように優先度がある故に軽視しといても問題ないだろう。
" 敵 " になるか " 味方 " になるかの判断は時期尚早だろう。
「時定、まだ着かねーのか?もう結構来ているんじゃないのか?」
「本来なら着いております。ただ今の麦の村には嘗ての村とは程遠い状態です。難民と奴隷の村として認知されておりますので、敢えてその場所を経由しております」
「わかった。お前が言うならそれで行こう」
「なぜ簡単に信じるのです?" 汚れた " 奴隷と難民ですわよ」
その一言にブチギレた時宗。
「汚れただと?お前が言うようにここが表の世界だと言うなら、奴隷と難民を作り出したのは貴様ら王族であろうが!」
ルーヴェルも反論する。
「光があれば闇もある!これが格差と言うものですわ!これは世の常です!」
抜刀する時宗。
「兄上!」
「時宗様!」
「黙ってろ!何が格差だ!人は等しく平等だ!奴隷も難民も人間なんだよ!なぜお前らに強いたげられなくてはならない!思った通りだ。この世界は糞だ!それは等しくお前ら王族・貴族がな!」
続けてルーヴェルに言葉を投げ捨てる。
「失せろ。然もなくば……斬る。お前は根本的に狂ってる。何故俺たちを呼び出した!目的はなんだ!」
ここで俺の優先度は変わった。
ルーヴェルの野心、いや国王の野心に危険を感じたからだ。
恐らく光と闇の世界を統一し奴隷を駒使いにし、税収を搾り取り自分達は裕福な生活をしたいだけだと。
何となく俺の直感がそう言っている。
だから時定は遠回りしたのだろう。
俺の気持ちを言わなくても、あいつは分かってくれている。
「兄上、奴隷街に着きました。一旦この女の処遇は追放にして、まず村に入りましょう」
「隠、時雨、連れていけ。まずはオレたちだけで奴隷街に行ってくる」
街に入ったときに感じたのは、とても懐かしい感情を覚えた。
ある奴隷の背中を見たとき全身に震えを感じた。全身の毛穴が開くような感覚だ。
時宗はそっと1奴隷の男へ声をかけた。
「お待ちしておりました。御館さま」
その奴隷は振り返り涙を流した。
「時宗、時定……会いたかったよ」
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