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【9】時定に魔剣って不要っしょ!
ぶつぶつと呟きながら時宗は考え込んでいた。
ここで時宗の心の声を聞いてみよう。
(時定は魔法が使えて、おまけに魔剣……いやいやいや魔剣て!あいつ基本的に戦わねーじゃん!死に方に対しての贈り物的な感じ?いや俺も、まぁまぁエグい死に方しましたけど!!)
「兄上どうされたのです?」
「あのさぁ、お前の魔剣って最初から使えた感じ?」
「えーっとですね、何か天の声みたいのが聞こえてきまして、その通りにしたら刀に魔法を付与出来た感じです。それがどうかされたのですか?」
(どうかされた、じゃねーわ!俺には全くないんだが!)
「うん、いやな、お前はさぁ刀なんて殆どつかわねーじゃん」
「そうなんですけど、貰ったものはしっかりと利用するつもりですよ。これからも兄上を、お支え致しますので期待していてくださいね!」
「お、おう。助かるわ」
察しが悪く空気の読めない満面の笑みと、察しが悪く空気の読めない覚悟に満ちた眼を見て時宗は何故か全てを飲み込んだ。
というよりそんな実直な姿の弟が可愛くて仕方なかったのが真実なんだけどね。
時宗は、ふと思った……
「ん?ちょっと待てよ……皆、天の声的なものを聞けたのか?」
隠が答える。
「はい!因みに私は俊身という魔法というかスキルを付与できます。一瞬で数㎞進むことが出来ますよ」
「じゃー時雨は?」
最早ふて腐れている時宗。
「私は影を操る事が出来ます。なので分身なども得意ですよ」
「で、ルーヴェルは治癒で俺だけ無……」
「いやいや、兄上、まだわかりませんぞ……ほ、ほら突然覚醒したりとか……」
「いいよ……慰めなんて……いらないよ」
全力で拗ねてしまった時宗であった。
「ま、まぁ兄上……な、無いものを強請っても仕方ないじゃないですか。これからやらねばならないことを進めていきましょうよ。その先に何か見えるものがあれば、万々歳じゃないですか」
「すごい冷静に弟から諌められた気がする……」
「そ、そんな事ないですよぉー殿」
皆がまるで赤子をあやす様に……時宗を宥めるのであった。
大きく一息をついた時宗が真面目な顔に変わる。
「ふー……そうだな。お前たちの言う通りだ。俺の能力よりも御舘様探しを再開しよう。迷惑をかけてすまなかった」
この一言にルーヴェル以外の全員が安堵した。
何故なら時宗という男は、前世で無茶苦茶な男だったからである。付いたあだ名は " 傾き者 " 友人が傷つけられた時には、無法者の溜まり場を1人で壊滅させた事が幾多もあるからだ。
そう、この男の強さは異常なのだ。
幼少期には1人仲間外れをされた時に、全員に報復するなど……とにかく、この男は規格外過ぎて全てがエグいのである。
人々は語り継いでいた。
1vs100の戦いでも勝てる自信がないと……
「では、兄上参りましょうか。一旦拠点はイキスにしまして、ここから西にある "
楠 " という村を目指しましょう。何か手掛かりがあるかもしれませんので」
「わかった。では皆いくぞ。次の目的地は楠だ」
「楠ですか。1度お父様伺ったことがありますのよ。麦の収穫で有名な村ですわね」
「へー」
「へー。って!凄く素敵な村なのですわよ!少しくらい興味を持ってもいいではないですの!」
全員が無関心な事に今度はルーヴェルが拗ねる事になったのであった。
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