【1】あのー……俺、戦で死んだはずなんだが……

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【1】あのー……俺、戦で死んだはずなんだが……

 ━━━時は大戦国時代━━━  浮島時宗(うきしまときむね)は1人の武将として戦に赴いていた。  中立の小国は突如、天下人に攻められ、今まさに終焉を迎えようとしていた。  奴らは2万の大群。こちらは精々2000の兵力。  俺の国は御館様を筆頭に攻撃をされない限り戦をしない国であった。  しかし、一度攻められる事があれば、全員が傾く。  そんな俺たちを驚異と見るものも、実際少なくはなかった。  実際にそれが後の禍になると判断した、天下人と言われる男が戦を決断したようだ。  あの日まで俺たちはとても平和な生活を送っていた。  ━━━しかし━━━  狼煙が上がり、伝令兵が息を切らしながら走ってきた。 「緊急伝令!!天下人久我義忠(くがよしただ)軍が急襲!!数2万!」  当然、皆はざわめいていた。  ただ1人を除いて……  それは御館様である。 「遂に……か。これぞ、死に戦の醍醐味よ!時宗!後れるなよ。」 「最期まで御館様と共に!!」 「時宗……最期まで苦労を掛けたな」  ━━それが御館様の最後の言葉だった━━  大群に囲まれ無数の矢を浴び、自身の命が尽きる事を悟りつつも、一番に気になったのは御館様の事だった。  後ろを振り返ると……御館様は既に事切れていた。  俺は深く一礼をし、最期の力を振り絞り一世一代の大傾きに打って出た。  何かが変わるわけでもない、完全な負け戦。死は免れない戦いだが、俺は最期の瞬間まで楽しかった。  力尽きた俺の体は打ち首され、御館様と一緒に戦場で吊るされたらしい。  俺は死んだ……だが悔いはない。  武士(もののふ)として国の為、御館様の為に死ねた。  また、あの世で御館様と共に駆ける……はずだった。  はずだったのだ。  ………………  …………  ……  緑が生い茂る草原。心地よき風。  そこに横たわる甲冑を着た場違いな武士。 「何処だここは?あの世というやつか?」  すると誰かに答えられた。 「可笑しな事を言う人ですわね。天国は亡くなった方が向かう所。ここはホランって国ですわよ。それにしても見かけない服装ですわね?」 「ホラン?南蛮の地か?」 「ナンバン?」 「御館様は何処だ?」 「そういう方は存じ上げないですわね。あなたは何処の国の方ですの?」 「岸の国だ。名を浮島時宗という」 「私はホラン国のルーヴェル。ルーヴェル・ホランですわ」 「南蛮人のような名をしておるな」 (一体どうなっているのだ……この女子(おなご)は、あの世ではないと言ったな……だがあの時、俺は確実に死んだ。……では、ここはどこなんだ!) 「ルーヴェルと言ったか?色々と聞きたいことがあるが、俺は御館様を探さなねばならん」 「えーっと……申し上げにくいのですが、その御館様と言われる方は、この世界にはいらっしゃらないと思いますわ」 「どういうことだ!」 「恐らくあなたは、この世界へ何らかの形で転移したと思われます。私ではハッキリした事を申し上げる事が出来ませんので1度、王宮へ来られませんか?」 「確かに……今はそうするしかないようだな」 「では、使いの者がお城までご案内致しますわ」 「城だと!?大名は誰だ!まさか!久我の者ではあるまいな!」 「クガ?その方は、どなたでしょうか?私のお城でございます。誰か、時宗殿をお連れして下さるかしら」  威厳のあるイケメンがルーヴェルへ耳打ちしている。 「姫様、宜しいのですか?このような何処の馬の骨か分からぬ奴を……危険では……」 「危険から逃げているばかりでは、状況に変化を齎す事はありません!私たちは変わらなければならないのです!」 「それは理解しています……が、あんな堅物で頭悪そうな奴でいいのですか?」 「ん?何か悪口が聞こえた気がする……」  ルーヴェルは小声で制止する。 「しー!聞こえますわよ!」 「いや、聞こえてますけど」 「え、えーと。時宗様。ま、まずは向かいましょうか」 「今無かったことにしたよね?絶対したよね?」 「では、こちらへどうぞ」 「って!聞いちゃいねーし!」  俺は思った……何かもういいや!って。  と、とにかく。俺はあの時、確実に御館様と共に死んだ。死んだ後に、何故か俺の死体は再生したようである。  はぁ……御館様とあの世で駆ける思いは叶わなかったなぁ。  あの女子の話では、あの世でもない世界に現状のまま転移したようだ。  何が何だかわからんし、何故言葉が分かるのかも謎だが……本当に、もういいや!  御館様……俺だけ生きている事、申し訳ございませぬ。  岸の国、筆頭武将として恥じぬように、この世界でも大傾きをしてみせます!!
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