【2】妖術使いは恐ろしいです!

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【2】妖術使いは恐ろしいです!

 そんなこんなでルーヴェルと口悪いイケメンに連れられて、王国に向かう事になった。  道中の景色も動物も、死ぬ前の国では見たことがないものばかりであった。 「やはり俺は知らない世界に来てしまったようだな。ここにある全てが俺の世界には存在しないものばかりだ」  少し驚いたような表情を見せるルーヴェル。 「では、どういった世界だったのですの?」  時宗は少し話すのを躊躇うが自分のいた世界を語り始めた。 「この世界がどうかは知らんが……あの世界は血に飢えた世界だった。人間同士で殺し合い、敗れた国は全てを失う。土地も権威も女も民も」 「なるほど。では、そんなに変わらないですね」 「え?こんなに長閑な場所からは、全く想像ができないんだが」 「あーそうですわね。ここは神聖なる中立地帯ですから。この地を荒らすと100年の天災が振り掛けると言われているのですよ。なので、ここだけは昔のままなんですわよ」 「では、今から向かう所は荒れ地になるのか?」 「流石に王国内は潤ってますわよ。ただ、それ以外の場所は、あなたの居た世界と大差ないかも知れませんね」 「どの世界にもバカはいるものだな」 「それはそうと、その腰に付けてる物はなんですの?」 「これは武士の命である刀だ」 「カタナ?何をする魔法具なのですの?」 「まほうぐ??なんだそれは?」 「魔法が使える道具ですわよ。知らなくて?」 「妖術か?」 「妖術?いえいえ、そんなまやかしでは御座いませんよ。こんな風に……」  ルーヴェルは優しい光を手から発した。 「なんじゃそれは!?お、女子よ、それをおれに近付けるでない!」 「何を驚いているのですか?まさか、あなた、魔法を知らなくて??」 「知らんわ!そんな妖術まがいな事!」 「では、どんな戦いをしてたのですか?」 「馬で駆け、槍を振るい、刀で撫で斬りにする!それが俺たちの戦だ」 「あーお祖父様から聞いたことあります。蛮族の方がそんな戦いをしてるとか」 「蛮族ではない!某は武士だ!」 「あ、そうでしたわ。今、お城に面白い服装の方がいらっしゃるのですが、もしかして、お仲間さんかしら?たしか、名前は影乃隠(かげのいん)だったかしら……」 「なに!?アイツも来てたのか!それは光明がみえた!あ……ちなみに名前違うからね。影乃隠(かげのかくれ)だから」 「どうりで!インちゃんって呼ぶと怒ってたのですわね」 「い、インちゃん……最強の(しのび)も形無しだな」 「お城に着いたら、お会いしますか?」 「ああ、勿論だ。アイツは俺の忍なんでな」 「あの方は、そのー……臆病な方ですわよね?勿論、魔法も使えないし、これからこの世界で生き抜くには大変でしょう」 「いや、臆病ではなくて忍なんで、隠れて重要な任務をこなす奴なんだけど。それと……魔法が使える方が異状だからな!マジで!」  大きい声を出したところで例のイケメン騎士が登場。 「貴様!姫様に向かって無礼であるぞ!」 「あ?やんのか?」 「いいだろう。姫様失礼いたします」  そう言って馬車を止めるイケメン。  既に勝ち誇った顔をするイケメンを見て、無性に腹が立ったのを覚えている。 「一撃で終わらせてやる。雷殺(ライトニング・キル)」 「うわっ!あぶねー!!汚いぞ貴様!」 「ん?外れた……?まぁいい次で終わらせる」 「また妖術か!」  逃げ回りながら時宗は考えていた。  これ、ワンチャン斬れねーかなぁーと…… 「速度もそんな速くねーし、ぶつぶつ喋る時間もなげーし……これ斬れるんじゃね?」  時宗はイケメンへ向けて体を反転させ、一気にトップスピードで斬りかかった。  イケメン騎士は、時宗の迫力に押され尻餅をついてしまう。  " 勝負あり "  イケメンは冷や汗が止まらず、体は明らかに恐怖により硬直していた。 「なんだ、あの鬼のような眼光は……」 「よっしゃー!俺の勝ちな!じゃーお前の首を貰うぞ」  急いで止めに入るルーヴェル。 「ちょ、ちょっと待ってくださぁーい!」  寸止めを強いられた時宗は不機嫌そうであった。 「なんぞ?女。邪魔をするな!」 「決闘に負けたら首を取るって、いつの時代ですか!」 「時代?知らんが俺の世界では、これが慣わしだ」 「この世界に、そんな慣わしはないので却下です!」 「女がしゃしゃり出てくるな!お前も斬って捨てるぞ!」 「バカじゃないですか!?」 「ば、バカだと!?キサマ……!」  その時、遠くから聞き慣れた声がした。 「とのぉー!とのぉー!会いだがっだでずぅー」  号泣する、相変わらず面倒臭い忍。 「うわっ!きったね!涙と鼻水でグッショグショじゃないか!」  甲冑に顔を擦り付けて泣かれる時宗は引き剥がす事に必死になり、首などどうでも良くなっていた。  その光景にしびれを切らしてルーヴェルが時宗に噛みつく。 「時宗殿!話はまだ終わってませんわよ!」 「うるせーなー!状況見て口を開けよ!つーか、手伝え!」 「い、嫌ですわよ!何かその、汚らわしいじゃないですの!」 「とのぉー、アイツら怖いですぅー。妖術を使うんですよぉー。私、怖くて逃げ回ってました」 「いや、逃げてたんかい!」 「だって怖いですもん。とのー慰めてくださーい。膝枕してぇ」 「出来るか!!」 「えー、いつも添い寝してくれてたじゃないですかぁ」  その言葉を聞いてルーヴェルはニヤリと笑う。 「あれぇー?時宗殿にそんな一面があるだなんて、以外ですこと」 「隠!黙れ!あと、そこのメスも黙れ!」 「隠ではなく、本名で呼んでくださいよぉ」 「お前!忍になる時に本名を伏せたじゃないか!何を今更」 「あら、隠さんに本名がありますの?私も知りたいですわね。時宗殿の口から」 「言わねーよ!」 「姫様……そろそろ参られませんと、陛下が……」 「そ、そうでしたわね。時宗殿、早く乗って下さいまし。何をイチャついてるのかしら」 「イチャついてねーわ!ほら行くぞ、お涼」 「わーい。名前で呼んでくれた!時宗様、ありがとぉー」  つーかなんだよ!この展開!  まーだ城に着いてないって……いつ着くのよ!!
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