肉球爆裂★オンライン【短編】

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 その後は守護霊が出た報告が続いた。  守護霊アバター?  そんなの実装したかな。  アバター画像を作成したのはナカヤンの彼女の西松(にしまつ)さん。アップロードする前に大量の猫画像データを全部チェックしたけど、その中で【守護霊】なんて見た記憶はない。 「ナカヤン、アバター追加したん?」 「してない。だからなん何なんだろと思って」 「これって不具合なの? バグレポは届いてないよね」 「今のところ目に見えるエラー報告は出てない。アクセスが多すぎて鯖が落ちた以外は」 「放置しちゃまずいん?」 「そのうちヤバいエラーに繋がったら困る。えっとコードは俺が調べるからタッチーはバグ取りして」 「うぇぇまじで? 悪夢再び」  そんなわけで俺はひたすら画面に表示された猫の頭をタップしていた。アプリ公開前にもバグ取りしたけどバグ取りとは孤独で辛い作業である。アプリに不具合がないか、ありとあらゆる動作をチェックする。更にこのアプリで何が辛いかというと、糞つまんないんだわ。  そもそもこれは俺らが大学の夏休みの暇つぶしと小遣い稼ぎを兼ねて作ったアプリ、『肉球爆裂★オンライン』。画面上に表示された猫の頭とか肉球をタップしたら『にゃーん』という音が出る、基本それだけ。たくさんタップすると、たまに新しいねこの鳴き声とか顔とか服を変えるアバターがゲットできる。それだけのアプリ。  ようはジョークソフトってやつ。最初から長時間やり続けることを想定してない。
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