出席番号2番君の話

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~『両隣の家』~ 俺の両隣の家は爺さんと婆さんがそれぞれ住んでいる。 爺さんは頑固で口うるさい雷おやじ。 婆さんは優しくてお菓子もくれるゆるふわ系。 どっちも昔から世話になってる人だ。 その二人が数年前亡くなった。 爺さんの時はうるさいのがいなくなって清々した。 婆さんの時は泣いた。 その後、両隣の家には別の人が入った。 更にその数年後、連日に及ぶ大雨で近くの山が土砂崩れを起こした。 不思議なことに俺の家とその爺さんの住んでいた隣の家は無事だった。 衝撃的なのは直後の片付けの時だった。 その婆さんの住んでいた隣の家の片付けを近所だからっていう理由で手伝っていたとき、床下からいくつか骨が出てきたんだ。 婆さんがまさかの殺人鬼だった… てことはない。 婆さんのとこは、昔旦那さんと愛犬を散歩のとき事故で亡くしてたんだ。 独りになった婆さんは、寂しくて淋しくてどうしようもなくて。 葬儀の前にそっと骨の一部を持ち帰ったらしい。それを床下に埋めて、自分を護ってくれてると信じていたそうだ。 後日、婆さんの家族の人がそんなことを話してくれた。 これが婆さんの話。 それと、もう一個。 婆さんのとこの骨を供養してもらう為に地元の寺に行ったときのこと。 「貴方、男性の方に憑かれていますね」 と言われた。 泣いた。 詳しく聞くと、あの亡くなった隣の爺さんが俺にとり憑いて護ってくれてるらしい。 土砂崩れで俺と爺さんの家が無事であった理由がこれだ。 あの雷おやじが? 爺さんのとこは、奥さんも子もいなかった。 つまり、めっちゃ寂しかった。でもあの性格のせいで言うこともできなかった。 俺に対してうるさかったのは、爺さんなりの優しさと思いの裏返しだったんだ。ほんとはもっとかまって欲しかったんだろうな。 これが爺さんの話。 俺の両隣の家の住人は、とてもさみしがりやである。 もとい、とてもさみしがりであった。 一方の優しかった婆さんは亡くなった家族が自分の隣にいると死ぬまで信じて骨を隠した。 もう一方の頑固だった爺さんは亡くなった後すこーしだけ素直になって、自分のお気に入りであった俺の隣に居座り護ろうとしてくれている。 俺は。 俺は、自分が亡くなる前に隣にいてくれる大切な人へ精一杯愛してるを伝えたい。 後悔しないように。 今年も俺は、両隣の家にいた二人の爺さん婆さんの為に泣くのであろう。
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