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大学デビューのススメ
僕の名前は里中 健(さとなか たける)
まず始めに一つだけ、重要な事を提示しておこう。
僕は童貞だ。
つい数日前に二十歳になったが、生まれてこのかた彼女という存在がいた事がない。
それどころか女性の友達ですら現在進行形でいない。
更に高校の時なんかは三年間一度も女性と会話を交わした事もない。
いや、正確にカウントするなら母親とは話した。
母親も女性だ。差別は良くない。
別にこの発言に対して虚しさなど一切ない。
…それにしてもいつからこの出口のない迷路に迷い混んでしまったのだろうか?
小学生の時は気楽だった。
クラスの大半の男子は女子の事を目の敵にしていて、男子は男子だけでつるんで遊んでいた。
ところが中学に入った辺りから、周りの友達が女子の事を異性として少しずつ意識するようになってきた。
誰々の顔が可愛いとか、誰々の胸が大きいとか、誰と誰が付き合っているとか。
自分とは違う女という未知の生き物に対する興味が尽きなくて、友達の家に集まってはアダルト系の雑誌やDVDの鑑賞会をした。
思えばここが僕にとって人生の分岐点だったのかもしれない。
生まれて初めてテレビ画面の向こう側で見たセックスに皆興奮を隠せない様子だった。
しかし僕は男優の陰茎が女優の性器に飲み込まれてゆく様に、そしてその都度上げられる叫びにも似た喘ぎ声を聞く度に、例えようのない恐怖感と嫌悪感を覚えた。
男が女を貫いているのではない。
女が男を取り込んでいるのだ。
その証拠に男優が果てた後も女優は陰茎を貪り、最後の一滴まで種を搾り取ろうという勢いだった。
開けてはならないパンドラの箱を開けてしまった瞬間だった。
その時からだ、女性を恐ろしいと思うようになったのは。
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