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でも今更イメージチェンジなんかしたら、折角平和なスクールライフを過ごしているのに格好のネタにされてしまう。
どうするべきか良い考えが思い浮かばず机の上で石の様に固まっていると、視界の隅にある物がかすめた。
それは進路希望票。
そうだ!何も今すぐやる必要はないのだ。
大学で、僕の事を知ってる人が誰もいない環境で、また一からやり直せば良いじゃないか!
そう閃いてからの僕の行動は実に冷静で的確だった。
高校では出遅れてしまった為取り返しがつかなかったが、この経験を生かし華々しい大学デビューを飾ろう。
とりあえず目標は脱オタしてリア充になる事。
なのでリア充について真剣に分析してみる事にした。
僕は今まで何を基準に目の前の人間がリア充なのか、そうでないのかを判断していたのだろう?
服装や髪型などといった外見や周りの交友関係もそうだが、やはり一番の基準は彼女がいるかどうかではないだろうか。
中学生の時のAV事件以来、女性と接する事が怖くなってしまった僕にとってこれはかなりハードルが高い。
女性と目を合わせるだけで冷や汗が止まらず思考がストップする僕にとってそれは初期装備でラスボスに挑む様なものだ。
ならば彼女を作るのはあくまで最終目標に設定し、まずは友達…いや、とりあえずまともに話せるようになるところから始めよう。
その為にもっと自分に自信を付けたい。
僕は全ての女性を恐れている。
見透かし、蔑み、罵倒する。
指一本触れる事なくこちらを丸裸にして凌辱の限りを尽くす怪物。
そんな彼女達と自分が対等だと思えるくらいの自信が欲しい。
しかし簡単に自信を付けたいと言っても、もう長年この性格で生きてきたのだから容易ではない。
僕がこんなにも自分に自信が無い理由は一体なんなのか?
そんな事、悩むまでもなく分かりきっている。
単純に見た目だ。
ボサボサに伸びた長い髪、ニキビが多い肌、細い目、低い鼻、お世辞にもイケてるとは言えない服装。
改めて鏡で自分の姿を見ると溜息しか出ない。
もう既に心が折れそうなのだがネガティブな自分を必死に抑え込みポジティブに考えてみる。
確かに欠点だらけではあるが逆にそれを修正すればそれなりになる気がしないでもない。
目とか鼻とか骨格レベルの美容整形案件は諦めるしかないけど、髪型とか服装とか肌とかならなんとかなるんじゃないか?
ならばまずやるべき事は…髪型は目立つから変えればすぐにバレて学校で冷やかされてしまう。
来たるべき日が来るまでしっかりとどんな髪型がイケてるのか研究しておこう。
後は服装と肌。
服はお年玉で揃える事になるからできるだけリーズナブルな物を調べよう。
だがファッションのファの字も知らずに生きてきたせいで、どこのブランドの服が良くてどんなコーディネートがイケてるのか?などの知識が全くない。
勿論僕の周りにこれらの問題について相談できる人物などいる筈もない。
またしてもここで壁にぶつかってしまうのか?と思いきや、今は情報化社会だ。
人との関わり合いが希薄な自分を憂う必要は全くない。
スマートフォンと親指一つで、全知全能の神々と簡単に繋がって全ての謎が解けてしまう。
知識欲の赴くままに新たな世界の扉を開こうではないか!
神々の助言によると『ファッション初心者のお前はとりあえずモデルのトータルコーディネートをそのままネットで購入しとけ』
という事だった。
流石は神だ。
正直、色々調べてみたが全く自分で選べる気がしない。
かと言ってショップ店員なる者に現場で師事を仰ぐ事など僕にはできない。
奴隷が王族に謁見を願う様なものだ。
以上の理由からファッションについてはこれが最善の結論である事が分かった。
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