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大気との摩擦で急減速が始まる、一旦途絶えていた通信が復活した。
「ザッ……大気圏突入完了、まもなくパラシュート開放します」
真守の声がヘッドフォンから、かすかに聞こえてきた。
宇宙船のモニターからその様子を確認することはできない――でも心配しなくていい、私は君達の心の声を聞いているから。
カプセル上部が開放され、パラシュートが大きく展開した。
パラシュートとカプセルをつなぐのは日本の老舗工場が開発した特殊繊維ロープ。鉄の八倍以上の強度が、その期待と希望の重さをしっかりと支えていた。
「そろそろ私達の出番ね」有美は機体の制御レバーをしっかりと握った。
「前舞台は俺が整える。オオトリは有美、君だ。華麗な舞を演じてくれ」
ゆらりゆらりと揺れるカプセルがやがて安定すると、下部の耐熱シールドを爆破装置で吹き飛ばした。円盤状のシールドが奈落の底へ落ちていく。
「ランディングギア展開」折り畳まれていた四本の着陸用脚がゆっくりと広がる。
「後はカプセルからポッドの切り離しだが……上空の乱気流が激しい、このままだと垂直降下できない」
「地表はもうすぐそこよ、時間がない。私がなんとかする、すぐに切り離してちょうだい」
「危険な体勢だぞ」
「私を誰だと思っているの? 元体操日本代表よ、たとえ九十度傾いていたとしても、完璧な着地をしてみせるわ」有美の不敵な笑みに真守は観念した。
「わかった、まかせる。いくぞ……秒読み開始三秒前、二、一、切り離し」
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