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二人が口論している間に、アメリカの宇宙船が火星の大地に軟着陸するのが見えた。
「ああ、もう間に合わない。終わりだ……」
二人は落胆してしばらく俯いていると、緊急通信のアラートアイコンがコンソール上で点滅した。
「どこからだ? ……アメリカの宇宙船?」おそるおそる、真守はヘッドフォンを耳に当てると、英語でアナウンスが流れてきた。
「やあ、日本のクルー達、火星着陸おめでとう。残念ながら、私達は後一歩というところで、先を越されてしまった。本当に悔しい思いだ。しかし君達の果敢なる冒険と勇気に敬意を表したい。最初の第一歩は君達に譲る、ゆっくり準備して降り立ってほしい。この記念すべき日に立ち会えたことを光栄に思う。ありがとう」
二人は顔を見合わせた、そして少し頬を赤らめ、フッと笑いあった。
慎重にヘルメットを被り、グローブをはめ、お互いの宇宙服の確認を厳かに執り行う。
まるで儀式を始める前の白装束に着替えるように。
ハッチをゆっくりと開く。
何もない荒涼とした大地と、空にはフォボス、ダイモス、ふたつの月が浮かんでいた。
「さてと……どちらが先に降りましょうか?」
「それならこうしよう」
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