君の大きな足あとと私の小さな足

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 確かに思っていたのとは違うが、それなりに幸せではある。とんでもない臆病な大河くんだが優しさは人一倍ある。電車でお年寄りが立っていたら吃りながらも席を譲るし、ショッピングモールで迷子を見つけようものならば、親を探してその日のデートは終わってしまう。  何より私が大河くんに何かを話しかけたりプレゼントをあげてみれば、この上なく嬉しそうに笑う。愛されている実感は十二分にある。  ただ、そのプラス要素を打ち消してしまうほどの臆病はどうしたらいいのか。聡くんが彼女ができたんだから臆病治せよ!と叫んだことが今では理解できてしまう。また、その臆病を打ち消してしまうバスケの試合での格好良さも健在なのだから、素の大河くんを知らない人は簡単に騙されてしまうだろう。  かくいう私もその一人だったのだが。 「ねぇ大河くん?」  それは待ちに待ったクリスマス。商店街のイルミネーションの中、大河くんは私と手を繋ぎゆっくりと歩いていた。 「唯ちゃん、何?」  付き合いたては私に対してもオドオドしていた大河くんだが、この日までに大河くんの臆病が私に発揮されることはほとんどなくなった。 「やっぱりさ。大河くんが私を怖くないのは私が小さくて可愛いから?」  自分で言っちゃうあたり痛いなとは思うけど、はっきりさせたいのだ。小動物扱いは嫌いじゃないけど、そのままでは嫌だなんて贅沢かな? 「唯ちゃんは小さくて可愛いけど、怖くないのは今はそれじゃないよ。……俺さ、とんでもなく臆病だけどさ唯ちゃんと一緒だと安心するんだ。安らぎって言うの?唯ちゃんといると俺、いつか強くなれそうだから……」  全く。大河くんは学校の誰よりも背が高くて、バスケをしているときなんて、どんな大きな人にも立ち向かっていくのに。なのに臆病が治るのは『いつか』なのか。 「私はね、大河くんのバスケでの試合見るのがスゴくワクワクして好きだったの。カッコいいなぁって。でもね、今じゃハラハラする。大河くんが試合で臆病出しちゃうんじゃないかって、心配になる。大河くんは臆病をいつ治すの?私はそれをいつまで心配すればいいの?」  今年のクリスマスはホワイトクリスマスだ。足元はフワフワの雪が敷き詰められている。恋人ができて、はじめてのクリスマス。私にとっても大河くんにとっても特別な日であるはずだ。だからはっきりさせたい。  大河くんは臆病を治したいのか。小さな私の背中に隠れてばかりでいいのか。  これからの私達にはとても大切なことだ。
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