不妊治療

9/78
前へ
/119ページ
次へ
そう言うと、彰人さんは優しく私を抱きしめてくれた。 彰人さんと結婚して良かった。彰人さんとなら、どんなに辛い事があっても一緒に乗り越えていける気がする。 この時の私は、年を取った私と彰人さんが手を繋いで笑顔で歩いている未来がきっとくると信じていた。 土曜日、彰人さんと一緒に病院に行く。 今日で赤ちゃんがお腹の中からいなくなるのだと思うと悲しくて仕方がなかった。 赤ちゃん、私のせいでごめんね。初期流産は母親に責任がないと言われたけど、どうしても自分を責めてしまう。 看護師さんに呼ばれるまで、彰人さんが私の手を握ってくれていた。 「終わったらラインして。すぐに迎えに来るから。頑張るんだよ」 「うん」 手術が終わって数時間は病院で休む必要があるから、彰人さんは一度帰って、また迎えに来てくれる事になっている。 手術室に入ると泣きそうになったけど、 麻酔ですぐに意識を失った。 看護師さんに声をかけられて目を覚ました時には、赤ちゃんは私のお腹にいなかった。 手術は30分くらいで終わったらしい。 お腹に軽い痛みを感じた。 そのまま病室に連れて行かれ、3時間ほど休んだ後、再診察を受けてなんともなかったら、家に帰る事が出来ると看護師さんから説明を受ける。
/119ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加