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「ーーでは土曜日に手術をします」
産婦人科の先生は丁寧に説明してくれた。だけど、私が覚えているのはこの言葉だけ。
母に支えられながら診察室を出た。待合室には沢山の人がいる。
お腹が大きい妊婦さんと目が合うと、どうして私だけ、と悲しい気持ちになった。
病院を出て母の車に乗ると、涙が後から後から溢れてくる。
赤ちゃんに会いたかった。
初期流産率が高い事は知ってはいたけど、いざ自分が初期流産だと告げられると、苦しくて仕方がない。
つわりだってあるのに、どうして……。
「ひかり、土曜日、お母さんも付いていこうか?」
「土曜日は彰人さんが休みだから、付いて来てくれると思う」
「ひかり、元気を出してね。
またすぐに赤ちゃんが来てくれるわよ」
「うん」
母がいてくれて良かった。私1人だったら、この精神状態で無事に家に帰れたかどうかわからない。
母は私の家に着いた後も、夕食の準備を手伝ってくれて、彰人さんが帰ってくるまで一緒にいてくれた。
「ひかり、どうだった?」
玄関のドアを開けて彰人さんが家の中に入ってくる。彰人さんは私と母の様子を見て察した様だった。
「彰人さん、ひかりを頼みます」
そう言って母が帰ると、彰人さんは私を抱きしめてくれた。
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